海外在住すると老後はどうなる?アメリカ"年金"事情【401(k)|Roth IRA|Traditional IRA|SEP IRA|HSA】
こんにちは!めお(@meeowmiya)です。アメリカ在住8年目、フリーランスのイラストレーターをしています。
本記事ではこういった疑問にお答えします。
この記事を読んで得られることは次の通りです。
- アメリカ年金制度の大まかなしくみがわかる
- 立場が不安定な移民としてでもアメリカの年金制度を活用する方法がわかる
- それぞれの年金制度のしくみと加入方法がわかる
アメリカも日本と同じように税率が高く、おまけに世界で唯一「医療費破産」が存在するぐらい医療費が高額な国で、賢くお金と付き合う知恵はとても大切です。
日本に確定拠出年金やふるさと納税があるように、アメリカにもあの手この手で節税しながら資産を増やしたりもしもの時の医療費を積み立てる方法があります。
それでは詳しく見ていきましょう。
目次
日本の年金制度だけでは足りないのか?
もうすぐ定年になる人にとっては年金で十分に暮らしていける可能性はありますが、現在働き盛りの人は日本の年金だけではかなり不安というのが正直なところです。
一方で「年金制度は破綻している」という現実はありますが、年金制度の優れた点は65歳(または60歳)から"死ぬまで"もらえることです。
海外移住したら年金をもらえるのか?についてはこちらをご覧ください。
アメリカ年金制度のしくみ
アメリカでは公的年金制度にあたるSocial Securityは10年以上前に破綻していて、つみたてた年金は返ってこないことがほぼ確実です。
このため、退職金は個人での積み立てに頼らざるを得なくなりました。
個人での積み立てを支援するため、59.5歳まで引き出せない(引き出すと10%の罰金)と引き換えに、投資での収益(キャピタルゲイン)が課税されない投資口座である退職年金口座制度ができました。
退職年金にはいくつか種類があり、上限額や加入対象が異なります
。図にあるもの以外にも退役軍人や公務員が入れる私的年金がありますが、本記事では対象者の多いIRA、401(k)、SEP IRAについてみていきます。
投資との違い
退職年金口座が通常の投資口座と異なる点は2つあり、ひとつは投資収益(キャピタルゲイン)が課税されないことです。
もう一つは、非課税な代わりに59.5歳までに引き出すと罰金がかかります。
移民がアメリカで年金を積み立てるときの注意点
もし万が一ビザ切れなどでアメリカを去らざるを得なくなった場合、退職年金口座を解約する必要があります。
退職年金口座では59.5歳までにお金を引き出すと罰金、それもかなりの額(10%)をとられるため、立場が不安定な移民がアメリカで年金を積み立てるときにお金を引き出せる年齢59.5歳まで無事にアメリカで暮らせるのか?が問題になります。
様々な銀行に問い合わせたところ、アメリカに住所がなくても信用のある国に住所があれば(少なくとも今の段階では)退職年金口座を保持できる銀行を見つけて無事に退職年金口座を開くことができました。
「信用できる」というステータスを保ち続けてくれている日本に感謝。ちなみに口座を開いた銀行はCharles Schwabです。
チェックブックもATM料もタダの神銀行です。
IRA
まず拠点として開設すべき退職口座としてIRA(Individual Retirement Account)を紹介します。
働いていれば誰でも入れる退職年金口座なのが最大の特徴です。
上限額が他の退職年金口座に比べるとかなり低く、2021年の上限は6000ドル(65万円ぐらい)です。
一定の年齢(50歳あたり)を超え、退職までの残り時間が短くなってくると上限額が上がります。後述する401(k)とは異なり、雇用主に関わらずずっと持っていられる口座で、お金を一切入れなくても口座を持つことができます。
401(k)を持っている場合は転職時にロールオーバー(お金を口座から移す)先としてIRAが指定されるので、とりあえず持っておくのが得策です。
好みの銀行に問い合わせ、審査を経て口座を開設できます。
Traditional IRAとRoth IRA
IRAにはTraditional IRAとRoth IRAの2種類があり、どちらかを選んで投資を続ける形になります。
2つのIRAはキャピタルゲインが課税されないという点で共通していますが、課税されるタイミングが違います。
Traditional IRAは所得税を引かれる前の収入を入金し、キャピタルゲインも非課税ですが、引き出すときに課税されます。
Roth IRAは所得税を引かれた後の収入を入金し、キャピタルゲインと引き出す時は非課税です。
インフレを考えると、増えた額を課税される方が税金高くなるんじゃない?という考えから、私はRoth IRAを使っています。
IRAまとめ
- アメリカでの住所があり、働いていれば誰でも作れる
- 税優遇されており、キャピタルゲインが非課税
- 他の退職年金口座に比べて上限額が低い。2021年の上限額は6000ドル
- Traditional IRAとRoth IRAの2種類があり、どちらかを選ぶ
- Traditional IRAは所得税を引かれる前の収入を入金、引き出すときに課税
- Roth IRAは所得税を引かれた後の収入を入金、引き出すときに非課税
401(k)
401(k)は雇用主が提供する退職口座で、マッチといって雇用主が給料に加えてタダ金を入れてくれるのが特徴です。
上限額もIRAに比べて高額で、2021年は19,500ドル(220万円ぐらい)。
マッチは3-6%が通常です。401(k)の加入条件は雇用主によって異なります。
例えば私の会社では入社1年しないと口座を作れませんでしたし、401(k)を提供していない企業もあります。
IRA同様、RothかTraditionalかを開設時に選びます。銀行口座は基本的に雇用主が用意してくれます。
マッチとは
例えばマッチが3%の場合、収入の3%以上を401(k)に拠出すると雇用主も3%の額をあなたの401(k)に入金しないといけない、ということです。
これは給料とは別のお金なので、実質3%分タダでもらえる状態です。
拠出がマッチ以下の場合、例えば3%マッチのパッケージで2%拠出とすると、会社のマッチも同額の2%になります。
401(k)まとめ
- 雇用主が提供する
- TraditionalかRothを選択する
- マッチと言って雇用主がタダ金を入れてくれる
- 上限額が401(k)より大幅に高い。2021年の上限額は19,500ドル
- 加入条件が企業によって異なる
永住の予定がない場合、401(k)に加入すべきか?
ここでは
という疑問にお答えします。
投資による上下を全く無視し、早期引き出しの罰金10%が必ず発生すると考慮した場合、給料に関わらず、拠出額をマッチの9倍以下におさえると必ず利益が発生し、拠出額をマッチと同額にすると利益が最大にできます(計算式は後述します)*。
ここでは投資による値動きや税金は考慮していないので注意してください。
という意見についてです。
基本的には20-30%の税金プラス10%のペナルティを取られると考えるのが正しいです。
課税時期はTraditionalかRothによって異なりますが、Traditionalなら引き出し時に、Rothなら入金時に20-30%の税金がかかり、その上に10%のペナルティも払うというイメージです。
退職年金の引き出しについて
59歳半以降になると、退職年金口座からの引き出しはペナルティなしで可能になります。
米国での課税について
Roth IRAの場合は、米国に非課税でお金を引き出すことが可能です。
このとき、最初にRoth IRAを拠出した年の1/1から5年経っていないと非課税にはならないのでご注意ください(5年ルールやfive year ruleと呼ばれます)。
例えば60歳を超えていても、最初にRoth IRAに拠出した年齢が56歳以上であれば、5年ルールを満たしていないので、引き出す額は課税対象になります。
Traditional IRAは引き出し時に課税対象になります。
日本での課税について(日本に帰国してからの引き出しはオススメしません!)
Roth IRAを日本に帰国してから引き出す場合は元本(contribution)は2021年の段階では課税はされません。
しかし、日本では利益(earnings)が課税され、メリットが無くなるのでご注意ください。
Traditional IRAの場合は米国も日本も二重課税になるので、ご注意ください。
アメリカ退職年金の引き出し方
現時点では、日本に帰国するかに関わらず、アメリカの銀行口座を維持して、定期的にアメリカから日本への送金を行うのが課税が一番少ないかと思います。
用意すべき口座は3つです。
- Roth IRAまたは401(k)
- アメリカの個人口座(checking account)
- 日本の普通預金口座
手順は次の通りです。このようにすることで「年金での受け取り」ではなく「アメリカ普通口座からの送金」になります。送料はかかりますが、課税対象にはなりません。
- ネットバンキングで、Roth IRAまたは401(k)からアメリカの個人口座に送金する
- アメリカの個人口座から日本の普通預金口座に送金する(海外送金にはWISEがオススメです!)
アメリカではネットバンクでも店舗を構える銀行でも、ほとんどの銀行がアプリやオンライン経由で送金が可能になっています。
カスタマーサービスのチャットや電話などを使いつつ退職口座から個人口座への送金方法を調べましょう。
海外送金にはWISE(旧Transfer Wise)がダントツにオススメです。
世界中の通貨に使える送金サービスで、海外送金と比べて格段に安く、操作もカンタンで送金も早いため、引き出しの際にできるだけ送料をおさえるにはピッタリです。
通常、アメリカの銀行口座はアメリカでの住所と紐づけなので、帰国の場合は①アメリカに手紙を受け取れる家や住所を用意するか②アメリカに住所がなくても口座維持可能な銀行サービスにRoth IRAを移動させるのを忘れないようにしましょう。
SEP-IRA
401(k)付きの会社員がIRAと401(k)で合わせて税優遇された口座で最大25,500ドル積み立てている中、フリーランサーなどの個人事業主はIRAしかないと6000ドルしか積み立てられません。
フリーランサーが投資の上限額を引き上げるには?の答えがSEP-IRAです。
あまり知られていない口座ですがIRAの上限が大幅に上がったものです。
フリーランス収入が23.2万ドル以上の場合は58,000ドル、それ以下の場合は収入の1/4となります。
この場合の「収入」は個人事業のみでの収入を指し、副業などしている場合は本業の収入はカウントされません。
個人事業主として口座やシステムを作り、被雇用者として積み立てる、という一人二役をやることになるので、会計士に相談しながら投資するのが良いと思います。
副業でも開ける口座なので、上限額を増やす手段として使ってみるのも良いかと思います。
SEP-IRAまとめ
- 個人事業主向け。雇用主としてシステムを作り、被雇用者として口座を開く
- 副業でも自分のビジネスを持っていれば作れる
- 情報が少なく、責任も大きいので会計士に相談することを強くオススメ
- 上限額が大幅に高い。2021年の上限額は58,000ドル
- IRAの6000ドルだけでは物足りない人は投資額をぐーんと上げられる
番外編 医療貯蓄口座HSA
アメリカは医療費が非常に高額です。
特に健康な若者にとっては、病院に行きもしないのに毎月毎月法外な額の保険料をとられて、でも何かあったときのためには解約できないし…と頭を悩ませる原因のひとつです。
傷口を最大限防ぎつつあわよくば老後に向けて積み立てできる制度がHSAです。
HSAはdeductibleが高く($3500以上)、もしもの時に自腹を切らないといけない額が大きい健康保険に加入している人が入れる積み立て口座で、Traditional IRAのように入れた額は収入から控除され、医療費にだけ使われます(それ以外では罰金)。
余った額は繰越でき、投資に回すことができます。
つまり二十代の健康なうちに積み立てた医療費貯蓄が健康リスクが上がる40, 50, 60代に非課税で使えるということです。
もちろん若いときの不慮の事故が起こったときにも非課税で引き出せるので、健康だけどお金を賢く運用したい、という方にオススメです。
HSAまとめ
- 自腹額の大きい健康保険に加入している人対象
- 拠出額は収入から控除され、医療費に使える
- 繰越、投資が可能
- 若いうちに健康リスクが上がる老後にむけて医療費を積み立てられる
- 不慮の事故などにも使用可能
- 健康でリスクの高い保険に入りたい人のためのセーフティネット
まとめ
以上「海外在住すると老後はどうなる?アメリカ"年金"事情」でした!
難しいように見えますが、英語でいくつかパーソナルファイナンスの本を読むと、そう難しく考えなくても年金を積み立てられることがわかりますよ。
最後にオススメ書籍を紹介します。ぜひ参考にしてみてください!
「役に立った」と思っていただけたら、シェアいただけますと幸いです。ブログやWEBサイトなどでのご紹介もとても嬉しいです!
*
x=給料, y=拠出(割合), z=マッチ(割合), w=ペナルティ(割合)とする.拠出,マッチ,ペナルティを経た後の総額が給料より高い条件は次の計算式で表すことができる
(1-w)x(y+z)+(1-y)x>x
これを更に計算すると
x{(1-w)z-wy+1}-x>0
x{(1-w)z-wy}>0
両辺をxで割って
(1-w)z-wy>0
ペナルティ10%の場合は
0.9x-0.1y>0
9x-y>0
つまり拠出額がマッチの9倍以下ならペナルティを考慮しても401(k)を通じて利益を得られる.またzが固定と考慮するとyが小さければ小さいほど利益が大きいので,マッチギリギリの拠出が利益最大